とよさとっこのこうかんにっき

我々が統治する豊里において、誰であろうとこの領域には踏み込むことは許さぬ。ウホウウホウホウホ

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第10話 子供の頃、家に帰宅して誰も居ない時、怖いから「いるには分かっているぞ」って言いがち~

 

 

みち子(本当は悪役)は相当嫌がったが、たかしの提案でわたるを連れてカフェにいた。

 

「いやー、わたる君僕と同じ村なのかー。僕あまり外に出ないから近所さんとか分からなくてねー。」たかしは自分の脈拍を測りながら、肩でエイトビートを刻んで話しかける。

 

 

 

わたるはたかしの話を軽く無視して話す。

「さっき言っていた、、、、、、、、、世界征服を企んでるやつがいるってホントなのか?」

 

 

 

わたるはみち子(本当は悪役)に話しかけたが、みち子(本当は悪役)は青汁スムージーをストローで ちゅーっ と吸いながらわたるの問いかけを無視し、あんたが答えなさいよ、と言わんばかりの目でたかしを睨む。

 

 

 

「うん。実はね。今ね。僕たち情報を集めていてね。

というのも、僕たちには敵がいるんだけど。その敵っていうのがどうやら世界征服を企んでいるみたいなんだ。考えることが子供みたいだろ?」たかしは片目を瞑り、肘を曲げ両の手を肩の高さまで上げ、掌を上に、手首を外側に折り、肩を上下に動かして、バカバカしいと言わんばかりに、フンっと鼻で息を吐いた。

 

 

 

みち子(本当は悪役)は頭の血管がはち切れそうな表情でたかしを見ていた。なんならピキピキ音も鳴っていた。さらに言えばたかしの事がもうなんていうか嫌いだった。

 

 

 

「その敵っていうのはなんなんだ?てかそいつらからしたら、お前たちも敵ってことになるよな。何かあったのか?」わたるはみち子(本当は悪役)に聞く。

 

 

 

みち子(本当は悪役)はたかしに話させていると、飲んだ青汁スムージーがソリッド状に出てきそうなので、嫌々ながらも口を開くことにした。

「はっきり言ってその敵の正体は分からないわ。皆目見当もつかない。

村長に聞いても、ただそういう事を目論む組織がいるって事くらいしか教えてくれなかったわ。そしてその悪事を止めることが出来るのは、、、、、、、、、、私だって、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は自信が無さそうに話した。

 

 

 

「組織、、、、、、ね。」わたるはこの瞬間、自分が財布を持ってきていないことが発覚し、お会計の時どうしようか考えており、みち子(本当は悪役)の話は上の空だった。

 

 

 

「てゆーか何よ。あんた何か知ってるの?そもそもなんで私たちの話に食いついたわけ?

もしかしてあなた、、、、、、、、組織の人ね!」みち子(本当は悪役)は見当違いもいいところだった。

 

 

 

「っふ、、、、、、、、、、俺が世界征服出来そうか?俺はつい先日、自分の力に自信を失ったところさ。」わたるはあの時の細身の男を思い出していた。すごく細かったなと。

 

 

 

「何かあったの?何かあったの?」みち子(本当は悪役)はわたるに2回聞いた。

 

 

 

わたるは静かに、お店の外の小鳥のさえずりさえ聞こえる位の声の大きさで話し始めた。

 

隣の村の役所で本を拾ったこと。

そこでみち子(本当は悪役)を見かけたこと。

その本には謎の言葉が書いてあったこと。

その本が奪われたこと。

黒いスーツを着てサングラスをかけた細身の男に戦いでコテンパンにやられたこと。

わたるは綿あめが好きだということ。

 

わたるは最後に「黒スーツの細身の男の胸に、ちくわぶのバッジが一つ付いてたな。」と付け加えた。

 

 

わたるはあった事を包み隠さず全て話した。

 

 

 

「その本は私が借りようとしていた本ね、、、、」みち子(本当は悪役)はあの時の失態を思い出して大爆笑をした。

 

 

「まさかあなたが拾っていたとは、、、、、ふふ、、、、、なんか不思議。」みち子(本当は悪役)はわたるの話を聞いて何か合点がいったみたいで、わたるに綿あめをご馳走してあげた。

 

 

 

「え?」わたるは綿あめは要らないからここは奢ってくれと心から願っていた。

 

 

 

「どうやらあなたの話を聞いて、私の敵がはっきりと分かったわ。いや、まだそう言うのは早いか。いや、でも大体分かったわ。って言っても半分くらいの確率だけどね。いや、そんなに無いか。」みち子(本当は悪役)は素因数分解の仕組みが分からなかった。

 

 

 

ごぼうの塩焼きおかわり!」たかしが馬鹿みたいに大きな声でメニューを追加注文する。

 

 

 

「今話した奴らがお前たちの敵なのか?

これは優しさで言うけど、、、、だとしたらやめておいた方がいい。細身の男、、、、、、あの男の魔法は洒落にならないくらいに強烈だった。君に勝てるとは思えない。

年も俺とそんなに変わらないだろ?ましてや女なんだから絶対に無理だろ。それに連れの人もそんなに強そうには、、、、、、、、、、、、、、、、。」わたるはごぼうの塩焼きをヨーグルトと一緒に美味しそうに頬張るたかしを、何か汚いものを見る様な目で見ながら言ってあげた。

 

 

 

「本に何が記してあったか分かる?」みち子(本当は悪役)は綿あめの炙りチーズグラタンをわたるにご馳走させた。

 

 

 

「いや、それがその本なんか変で、、、、、、、、、、、、、。聞いたことのない謎の言葉が書いてあった。」わたるは綿あめの炙りチーズグラタンは要らないからここは奢ってくれとご先祖様にお祈りしていた。

 

 

 

「なんて書いてあったの?」みち子(本当は悪役)は追加で綿あめのホワイトソース仕上げをわたるにご馳走させた。

 

 

 

「うーーーーーんと、、、、、たしか、、、、、、。“はん、、、、、、、、、ぺん”。うん、たしか“はんぺん”だったかな。」わたるはまさか今日一日でこんなに綿あめを食べるとは思わなかった。わたるはもはや綿あめが嫌いになりかけていた。

 

 

 

「やっぱりあの時私が見たのも、、、、、、、間違いじゃなかった。、、、、、、、、、、、、そうよ。“はんぺん”よ。、、、、、、、、、今はもうあまり語り継がれることのなくなった。」

みち子(本当は悪役)は何か意を決して次の言葉を発した。

 

 

 

「その本は、私の遠いご先祖様が書いた書物。わたしは、、、、、、、、、、、、、その“はんぺん”一族の末裔なの。」

 

 

 

みち子(本当は悪役)の言葉にたかしは、ごぼうのあく抜きの工程の如く、ただただ度肝を抜かれていた。

 

 

つづく