とよさとっこのこうかんにっき

我々が統治する豊里において、誰であろうとこの領域には踏み込むことは許さぬ。ウホウウホウホウホ

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第16話 男子、全校集会の時テロリストが入ってきたら、どのように戦うか考えがち~

 

「私に“痛心誓言”が掛けられている?」みち子(本当は悪役)は頭にクエスチョンマークが2,3個出た。いや、本当は1個だけだったかもしれない。

 

 

 

「そうじゃ。そもそも“はんぺん”の村はおでん村の監視下に入っており、赤子が生まれたら遠隔魔法で“痛心誓言”を掛けるのじゃ。」と村長はハンカチで汗を拭きながらメロンソーダを飲んでいた。

 

 

 

「なぜそんなことを?」みち子(本当は悪役)はチェイサーでメロンクリームソーダを差し出す。

 

 

 

「“はんぺん”が怖いからじゃろうのう。」村長はクリームを そっと どけてメロンソーダにして飲んだ。

 

 

 

「こわい?」たかしは床に落ちたクリームを何とかして食べたいと思っていた。

 

 

 

「この世で唯一おでん村の“ちくわぶ”にまともに張り合えたのは“はんぺん”だけだからのう。

ちくわぶ”は“はんぺん”の力が目覚めることを恐れておる。」村長はたかしを憐れむ目で見ていた。

 

 

 

たかしとみち子(本当は悪役)は村長の話を聞きながら夜ご飯を食べることにした。

 

 

 

「これは赤ん坊だった頃のみち子ちゃんをたかしの父である たかみち がこの村に連れてきた時の話じゃ。

その時 たかみち は腕に抱えていた赤子に強力な“痛心誓言”が掛けられていることに気付いたんじゃ。それを解除する手段を知っていた たかみち は、何とはなしにみち子ちゃんに掛けられた“痛心誓言”を解除してしまったんじゃ。」村長は涙目で話す。

 

 

 

「“してしまった”って、どういうことですか?まるで“リミッター解除”してはいけないみたいな、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は村長の言い方に少し不満を覚えた。

 

 

 

「ふふふ、してはいけなかったかもしれないな。

“痛心誓言”を解除した途端じゃ。みち子ちゃんが大声でいきなり泣き喚くと、辺り一面大きな地割れが起き、川が氾濫し、山が崩れた。

たかみちは何が起きたのか分からなかったが、とにかく泣いているみち子ちゃんを落ち着かせようとした。

みち子ちゃんは次第に落ち着き、すると天変地異とも言えるその現象も治まった。

聡明なたかみちは、これは自分の腕の中に居る小さな赤子が起こしたものだと悟り、みち子ちゃんを起こさないように早く村に帰ることにした。

この村についた後は、この村近辺の村長たちも呼んで、先程のようなことが起きないようにみち子ちゃんに強力な“痛心誓言”を掛けるように言い、しばらく村で休んだ後たかみちは村を出て行ったんじゃ。」村長は着ていた服をおもむろに脱ぎだす。

 

 

 

「う、う、うああああああああ!」たかしは頭を抱えながら叫び、気を失いその場に倒れこんでしまった。

 

 

 

「どうしたたかし!!!!!」みち子(本当は悪役)は挑発気味に言った。

 

 

 

「ちょっと村長!たかしの前であの人の名前を呼ばないでって言ったでしょ!」よし子は村長の服を引き裂きながら村長をしつこく注意する。

 

 

 

「しまった!すまん!たかし大丈夫か!たかし!――」村長はたかしが思春期の頃を思い出していた。

 

 

――――――――――――――

 

「たかし、お前どうして父ちゃんの名前を聞きたがらないんだ?」村長はたかしに聞いた。

 

 

 

「ふん!俺と母ちゃんを置いてどっかに行っちまったろくでなしの“くそデブ野郎”と同じ文字が入ってるだけで気が狂いそうになる。俺の名前はな、あいつの名前から取ったんだよ!」たかしは優しい口調で言った。

 

 

 

「いいじゃないか。あいつはな、後にも先にもこの村一番の魔法使いだぞ?」村長はしがれた優しい声でたかしを諭した。

 

 

 

「はん!村一番ねぇ。ふん!じゃあ俺は世界で一番の魔法使いになってやる!だから村長!俺にかっこいい魔法をくれよな!」たかしは未だ見ぬ自分の魔法能力に期待しながら村長に言った。

 

 

 

「はっはっはっはっはっはっはっはっは。世界で一番か、大きく出たな。世界で一番の魔法使いになってどうするんじゃ?」村長は聞いてみた。

 

 

 

「世界征服さ!」たかしは思春期全開だった。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、何バカなことを言っておる。そんな考え、魔法が付与される二十歳までになんとかしておくんじゃよ」村長はバカだなこいつと思いながら話半分で聞いてあげた。

 

 

 

「バカにするな!俺の世界征服はなぁ、いずれこの世のすべての魔法を使いこなして世界を、、、、、、。」急にたかしに勢いがなくなる。

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、なぁ村長。」たかしは急にセンチメンタルになった。

 

 

 

「、、、、、、、、、なんじゃ。」村長はしがれていた。

 

 

 

「俺が世界征服して悪者になれば、親父は俺の事をやっつけに来てくれるかな?」たかしはこの頃からマゾヒズム思考があった。

 

 

 

「なんじゃたかし。父ちゃんに逢いたいのか?」村長はたかしを煽った。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?ちげーーーーし!別にそういうわけで言った訳じゃねぇし!親父になんか逢いたくねえし!もういいし!帰るし!」たかしは半べそをかいて顔を赤くしながら帰ろうとしたが、たかしの肩を村長は両手で思いっきりつかむ。

 

 

 

「たかし。お前の父ちゃんはな、今世界と戦っておる。そしていつの日か息子に言われたいはずじゃぞ。おかえり たか――」おっとあぶない、、、うっかりたかしの父の名前を言うところじゃった、と村長は可愛げに舌を出しながら言った。

 

そしてつづける。

 

「たかし、お前の名付け親は確かにお前の父ちゃんだ、間違いない。」村長はたかし肩に手をやり目を見て言う。

 

 

 

「なんだよ急に。そんなの当り前じゃないか。」たかしは村長の禿げた頭を見つめる。

 

 

 

「父ちゃんがどういう気持ちでお前に名前を付けたか、分かるか?お前の父ちゃんはお前に期待して自分と同じ文字を入れたんじゃ。もはやあやつの名前は奴らにとっては聞きたくないほど恐ろしい名前のはずじゃ。」村長は髪の毛を整える。

 

 

 

「期待?奴らって?」たかしは村長の頭に思いっきり息を吹きかける。

 

 

 

「いいかたかし!お前はやらなくちゃいけんのじゃ!奴らの陰謀を阻止するのは、 たかみち の名を継ぐお前達なんじゃ!」村長はたかしの肩をガシッとつかみうっかりとたかしの父の名を言ってしまったことに気付いた。

 

 

 

「うああああぁぁぁぁぁぁぁああぁああああああ!」たかしは叫び倒す。

 

 

 

「たかしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」村長はおちゃめだった。

 

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―おでん村 青汁同好会 道場にて―

 

「はは、しかし総帥も今までなんでこのようなお力を我々に与えなかったのだろうか。」胸に 『かまぼこ』 のバッジを付けた細身の男が口を開く。

 

 

 

「そんなことはどうだっていいさ。いつかはこうなると思っていた。だからこの組織に入ったと言っても過言ではねぇ。」胸に 『なると』 のバッジを付けた筋骨隆々の男が裁縫をしながら声を荒げる。

 

 

 

「そうだな。そう言えばあんたはずいぶん古株だって聞いたぞ。この中でも一番5G歴が長いだろ。入れ替わり競争が激しい5Gに入ってどのくらい経つんだ?」胸に 『ちくわ』 のバッジを付けた中肉中背の男が婚姻届けを書きながら聞く。

 

 

 

「もう20年以上、、、、、、、、か。」胸に 『いわしだんご』 のバッジを付けた巨漢の男が珍しく何も口にせず話す。

 

 

 

「20年!?あんたすげえな!総帥が世界征服だとかなんとか言ってて実のところ本当に出来るのか不安だったけど、あんたがいれば何とかなりそうだな!」中肉中背の男はペンを止め巨漢の男を見上げる。

 

 

 

「ふん。奴らは手ごわい、そう簡単にいくかな。まだ気は抜けないな。」巨漢の男は何か含み笑いをしさらに続ける。

 

「それに俺に頼らなくったって、ここには俺よりもすごい奴がいるだろう?」と扉から入ってきた白髪の病弱そうに見えるだけの元アナウンサーの方を見る。

 

 

 

「何を無駄話をしている。総帥がお呼びだ。早く来い。」胸に 『さつまあげ』 のバッジを付けた白髪の病弱そうに見えるだけの元アナウンサーが台本を見ながら皆に告げ、足早になるべく音を立てないように総帥の所へ向かって行った。

 

 

つづく