とよさとっこのこうかんにっき

我々が統治する豊里において、誰であろうとこの領域には踏み込むことは許さぬ。ウホウウホウホウホ

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第9話 時計の針ってよく見てるとたまに針が戻るんですね。なんでですの~

 

 

みち子(本当は悪役)は村の預言者の所に居た。

 

 

 

「どういうことですか!あの時、あと5年後に“あること”が起こるって言ってたじゃないですか!」みち子(本当は悪役)は酒焼けした声を荒げる。

 

 

 

「うむ。あの時ワタシ忙しくてな。4年も5年も変わらないかなって思って言っちゃったんだけど、やっぱりまずかったよね。うん。ごめん。」みち子(本当は悪役)の村の預言者 数子はすっぱい顔でみち子(本当は悪役)に謝罪した。

 

 

 

「ってことはもう、“あること”が起きているかもしれないってことですよね?まだ全然準備できていないのに。どうしよう、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は焦っていた。

 

 

 

「なあなあ、“あること”ってなんだよ。なんかやばい事でも起こるのか?」みち子(本当は悪役)の隣にいたたかしはこの日快便だった。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」数子は口にガムテープを貼りだんまりを貫く。

 

 

 

「、、、、、、、、、、数子さん。あの時、私も何度も聞いたけど教えてくれなかった。もう時間が無いんでしょ?私、、、、、、なんか、、、、、、、嫌な予感がするよ。」みち子(本当は悪役)は数子を椅子に座らせ、ロープでぐるぐる巻きにして、自白剤を飲ませようとした。

 

 

 

数子は今日の晩御飯は何にしようか考え、カレーにしようと決めたところで口を開いた。

「ふむ、、、、、、、、、、、、、、、。これは、、、、ワタシの口からは言うことが許されていないから。村長の所に行ってらっしゃい。今ならきっと教えてくれるわ。」

 

 

 

みち子(本当は悪役)とたかしは数子に感謝の意を込めて、たかしの魔法で作った“めがね”を渡してその場を去って行った。

 

 

 

「ふむ。あの子達ならやってくれるかもしれないな。あんなに勇ましい顔をした者を見たのも何年振りかのぅ。」数子はたかしから貰った“めがね”を掛けて、二人の後姿を目に焼き付け、遠い昔の事を思い出していた。

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

ビルの一室で5人の男が集まり、ある話が始まろうとしていた。

 

 

 

「さて、これより兼ねてより計画していた“全世界ちくわぶで一つに成ろう計画”の最終確認を行う。」白髪で病弱そうに見える元アナウンサーの男が取り仕切る。

 

 

 

「いきなりすまないが、、、、、、、会議を始める前にこれを見てくれないか。」細身の男が序盤もいいところで会議を遮り、例の本を取り出し、皆に見せる。

 

 

 

「なんだこれは。なぜこれが?前に一つ残らず全て消したはずだが?」筋骨隆々とした男が玉止めをしながら驚いていた。

 

 

 

「ふん、どこからそれが出てきたかは今はどうでもいい。むしろ見つかったことをラッキーだと思うべきだ。あいつらの手に回った後では遅いからな。早くそれを煮るなり焼くなりすればいいだけの話。」巨漢の男がパン一斤をそのまま食べながら、何か味に物足りなそうに言った。

 

 

 

「ああ、その通り。だが、それが出来ないんだ。」細身の男が自らの魔法でその本を消滅させ始めた。

 

 

 

 

が、しかし、本は形を変えることなく元の姿のままだった。

 

 

 

 

中肉中背の男が意を決して離婚届に印鑑を押そうとしたが、

「どういうことだこれは?」と言い、その手を止めた。

 

 

 

「おそらく、この本には、この本が破壊されないように、"ある者"によって“魔法”が掛けられている。、、、、、、、、、、、、、、それも強力な。」細身の男がさらに続ける。

 

「この本の中身、皆も知っているように“零技芽(ぜろぎが)”になってしまった際の“痛心誓言”を解除する“リミッター解除”について記されている。

そしてこの本を読んで分かったことがある。」

 

 

 

皆の視線が細身の男に集まる。

 

 

 

「実は、はんぺん一族は生まれながらに、“痛心誓言”を掛けられているそうなんだ。そのあまりにも強すぎる魔法がゆえに。 そう。今まで消してきたこの本達は実は、、、、遠い昔に"ある者"によってはんぺん一族の為に作られた物、と考えられる。 仮に、はんぺん一族の誰かが“リミッター解除”されたら、またあの悪夢を生むことになる。」

 

 

 

「“技芽盛”(ぎがもり)か、、、、、、、、、、。」元アナウンサーの男が言う。

 

 

 

「そう、皆も名前だけ聞いたことがあるかもしれないが、総帥も昔こう呼ばれる者に辛酸を嘗めたらしい。総帥がおっしゃっていたが、“技芽盛”がまた生まれたらもう我々に打つ手は残されていないみたいだ。」

 

 

 

ガチャ

 

 

ドアが開き総帥が入ってきた。

 

「皆、集まっているかな?」総帥が青汁を両手に目を輝かせて言う。

 

 

 

「は!“5G”(ファイブジー)参上奉りましたぁ!」語尾が上がり気味で元アナウンサーが代表して言う。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、皆、力が欲しいかね?」総帥は青汁を見つめながら、不敵な笑みを浮かべ5人を見た。

 

 

▼▼▼

 

 

「世界征服って、、、、、目的俺と同じじゃん。てかそんなんマジで目論むやついるんだな。」たかしとみち子(本当は悪役)は村長の話を聞き終えて二人で話していた。

 

 

 

「世界征服ねぇ。でもどんな奴らが企んでるんだか、そこが分からないんだよね。」みち子(本当は悪役)はスパークリング青汁ドリンクをストローで飲みながら言った。

 

 

 

すると後ろから声が聞こえた。

 

 

 

「おい、その話本当か。俺のもその話詳しく聞かせてくれよ。」

 

 

 

そこにはボロボロの黒フードを被った男、わたるが立っていた。

 

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第8話 爪切った後って鼻ほじりにくいよね~

 

遠い昔の出来事。

 

 

はんぺん(本当は脇役)と、ちくわぶという者が争っていた。

 

 

この争いは過去数百年と続いており、約100年前に争いは終結した。

 

 

結果はちくわぶの勝利。

 

 

と、されている。

 

 

ちくわぶはその後勢力を拡大し、はんぺんの歴史を無くし、はんぺんを封印することにした。

 

 

だが近年、歴史の陰で身を潜めていたはんぺん一族の一部が復活を遂げていた。

 

 

優勢なはずのちくわぶ一族は、ちくわぶ一族に伝承されている、ある言い伝えに苦しんでいた。

 

 

 数百年に一度、はんぺん一族にこの世をも破壊することが出来る魔法を有する者が生まれると。そしてまた同時にはんぺんの封印を解く者が現れると。

 

 

 

 

 

そして今この魔法を持つ者が存在しているらしい。

 

 

 

ちくわぶ一族の夢は『世界征服』。奇しくも、この物語の主人公であるたかしと同じ思想を持つ。

 

 

『世界征服』すなわち、絶対的な恐怖で世界を手に入れたいちくわぶ一族は、世界をも滅ぼしうる魔法を持つはんぺんの存在が気に食わなかった。

 

 

この世で二つと絶対的な力はいらない。

 

 

ちくわぶ一族は心底はんぺんが鬱陶しかった。

 

 

ちくわぶ一族は"また"はんぺんを消すことにした。

 

 

 

そして今、約100年振りにはんぺん(本当は脇役)とちくわぶ達の戦いが、両一族の末裔達により再び幕を開ける。

 

 

 

 

みち子(本当は悪役)と青汁大好き謎の組織の総帥の戦いが、たかし目線で始まろうとしていた。

 

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第7話 方位磁石ほど繊細なものはない~

 

 

「うぅ、、、、、、、、、、。」たかしはお腹を抱えている。

 

 

「ったく、だらしないわね!せっかく期待したのに!」みち子(本当は悪役)はガチギレだった。

 

 

何があったかというと、たかしは山本さん(98)の髪の毛を奪い取り、その毛からだんごを作るまでは成功した。そしてこのだんごを食べてみると、みるみるうちにおなかの調子が悪くなりすぐさま漏らしてしまった始末である。

 

 

「でも、なんか、できそうだった。」たかしが弱弱しくも言う。

 

 

「え?なに?出そうだった?もう出てんじゃない!あんたのお尻から!」みち子(本当は悪役)は鬼の形相でたかしを罵る。

 

 

「違う、、、花、、、、咲かせそうだったんだ。」たかしは声を絞り出して言う。

 

 

「は?あんたの頭はいつも花咲いてるだろ!このマヌケが!」みち子(本当は悪役)はイライラマックス過ぎてたかしの言葉が頭に入っていなかった。

 

 

「ぐぅおおおおおおおおおおおおお!」たかしがいきなり叫び出したのでみち子も我に返った。

 

 

「なによ。まだ出るっていうわけ?」みち子(本当は悪役)はたかしの事が不憫でならなかった。

 

だが次の光景を見てみち子(本当は悪役)は目を疑った。

 

 

たかしはお尻から、どう考えても胃の中に入ってはいないであろう量のブツを出しながら、辺り一面をお花畑にして見せたのだ。

 

 

「これは、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)がたかしとなら世界を救えると確信した瞬間であった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

「誰だお前は?」細身の男がビルの廊下を歩いていると、目の前に黒のフードを被った男が現れた。

 

 

「この本に謎の言葉が書いてあるんですけど。」黒フードの男がそのページ見せる。

 

 

「なぜそれが?、、、、、、、、、、っち!こっちにこい。」細身の男は黒フードの男を呼んだ。

 

 

▼▼▼

 

 

「これで大体あなたの“だんご”について分かったわね。今分かっている事をおさらいしましょうか。」

  • 他人の毛から作った“だんご”を食べると、たかしはその魔法を受け継ぐことが出来る。ただし排泄されるとその魔法は使えなくなる。
  • 他人の毛から作った“だんご”を食べて魔法を受け継ぐことが出来るのはたかしだけであり、他の人がこの“だんご”を食べても何も起こらない。
  • この“だんご”を食べるとたかしは猛烈にお腹を下す。

 

「今わかったのはこんなところかしら。」みち子(本当は悪役)はメモを取りながらたかしに話しかける。

 

 

ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる

 

「た、たすけて、、、、、、」たかしは脱水症状になりかけていた。

 

 

「修行が必要そうね。今日はこの辺にしてまた明日違う人の魔法の練習ね!」みち子(本当は悪役)は明るい未来を見据えて今日はこれでたかしに別れを告げた。

 

 

たかしはあっけにとられて、おしりからとめどない量のブツを自分が咲かせたお花畑にまき散らした。

 

 

▼▼▼

 

「ぐはぁぁぁぁぁっ!なにすんだそれを返せよ!」黒フードの男が口から血を吐きながら棒読みで叫ぶ。

 

 

「これは君みたいなやつが持っていて良いものではないんだよ。まあ持っていたところで君の魔法ではどうする事も出来ないがね。」細身の男が泣きながら言う。

 

 

「何言ってやがる。俺はな、侍の家系なんだぞ。俺の魔法を見せてやる。」黒フードの男わたるは手を剣のように鋭く変え、叫びながら細身の男に切りかかる。

 

 

細身の男はわたるの攻撃をひゅるりと避け、一度つまづいたが何とか態勢を維持してみせ、わたるに自身の魔法を繰り出し、わたるは気を失った。

 

細身の男は落ちてしまった本をスクワットをするついでに拾い上げその場を去って行った。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第6話 酒は飲んでも飲まれるなって言葉考えた人TENSAI~

 

 

「このまま順調にいけば予定通りに事が進むな。」暗い部屋の中で細身の男が言う。

 

「まだ気は抜けないがな。」隣でハンバーガーを食べながら巨漢の男が続く。

 

「ずいぶん慎重だな。何か不安でもあるのか?」離婚届を書きながら中肉中背の男がさらに続ける。

 

「最近例の女がちょこまかと動いているらしい。あいつの魔法は未知数だからな。」裁縫をしながら筋骨隆々とした男が食い気味で続けると。

 

「ああ。あの子娘か。確かに奴は気を付けておいた方がいいかもしれないな。またあいつ達に足止めされていては顔が立たんからな。」白髪の病弱そうに見えるだけの元アナウンサーが締める。

 

ガチャ

 

ドアが開き男が入ってくる。

 

「総帥!来ておられたのですか!」元アナウンサーが座りながら背筋を伸ばす。

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」総帥と呼ばれる男はニコニコしながら何も言わず椅子に座る。

 

「おい!誰でもいいから総帥に青汁を持ってこい!」巨漢の男がテレビを見ながら部下たちに命令する。

 

「総帥!今日はどのようなご用件で?」離婚届を書き続けながら中肉中背が聞く。

 

「、、、、、。 “はんぺん” について、、、、、、、、、、、、、君たちに話しておこうか。」青汁をがぶ飲みしながら総帥は静かに語り始めた。

 

 

 

▼▼▼

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)はたかしの事が気持ち悪くて仕方なかった。

 

「そしてそのだんごを食べる!」たかしは目を輝かせながら言う。

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)はたかしの事が気持ち悪くて仕方なかった。

 

「するとどうなると思う?」たかしは聞いてみせた。

 

「(どうとでもなれ。一生腹壊してろ。)」みち子(本当は悪役)はたかしのブリブリとした問いかけ方にやるせなさを感じつつ、ギリギリでたかしの事が気持ち悪くて仕方なかった。

 

「元の毛の持ち主の魔法が使えるようになるのさ!」たかしは98歳のおじいちゃんの毛を握りしめながら言う。

 

 

みち子(本当は悪役)はたかしの話に驚きを隠せないようで、ジッとたかしを見つめる。

 

「いや、、、、まあ夢だけどなしょせん。でもやってみる価値はあるかなと、、、、、」たかしはみち子(本当は悪役)に見つめられ緊張してしまい、おしっこを2リットル超漏らしていた。

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。その話面白いわね。やってみなさいよ。もしそれが成功したらあなたは私の救世主になるかも。」みち子(本当は悪役)はこの時初めてたかしに興味がわいた。

 

 

年下の若い女の子にこんなことを言われたたかしは恋が始まった気がしていた。

 

「ちなみに山本さん(98)の魔法は知ってるの?」みち子(本当は悪役)が訊ねる。

 

「知らん」たかしは堂々と言う。

 

「はあ、あきれた。そんなことも知らないで“毛刈り”したの、、、?

山本さんの魔法は、、、、、、」

 

 

ごくり。たかしは口いっぱいのつばを飲み込む。

 

「花を咲かせることよ。」みち子(本当は悪役)はメルヘンチックに言う。

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、え?」たかしは聞き間違いかと思った。でも違った。

 

「なにそれ。しょぼいじゃん。まだ俺の魔法のがスゲーじゃん。だって食えるんだよ?」たかしは本音爆裂だった。

 

「何言ってんのよ!素敵な魔法じゃない!私がどれだけ山本さんの咲かす花に心を癒されたと思ってんのよ!山本さんの花は世界一なのよ!あんたの作った ”だんご” なんか世界一、いや宇宙一まずいわよ!見た目も気持ち悪いし、食べたら絶対におなか壊すもん!」みち子(本当は悪役)は白目をむきながらたかしに厳しめに言った。

 

「すまんすまん。山本さんの魔法も分かったことだし、その世界一っていう花でも君の為に咲かせてみるか。」たかしはみち子(本当は悪役)から貰った罵詈雑言に酔いしれ、口元にチョコチップを付けお茶目なところを魅せながら、みち子(本当は悪役)を口説いてみせた。

 

 

 「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」

 

 

みち子(本当は悪役)はたかしの事が気持ち悪くて仕方なかった。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第5話 ただのお湯のくせして白湯っていうと御洒落に聞こえる~

 

「あれ、俺寝てたのか、、、」たかしは眠りに入る前の記憶が無く、よし子に問い正したがよし子は冷たくあしらった。

 そしてふとテレビに目を向けると、みち子(本当は悪役)が殺人の容疑で捕まっていた。これはただ事ではないと悟ったたかしは、悟りまくったうえでハーブティで一呼吸を置き、しっかりと入念に、丁寧に、時に大胆に、ストレスを与えないようにストレッチを行った後、みち子(本当は悪役)の住む隣の村の警察署に向かった気がした。

 

よし子は家を出ていくたかしの姿を見ながら先程のたかしとのやり取りを思い出していた。。。

「リミッター解除ねえ、、、、、、、。たかしはあんたそっくりだよ。」そう呟きながらよし子は棚の上に置いてある夫の写真を見つめた。

 

 

▼▼▼

たかしは隣の村の警察署に着くと、みち子(本当は悪役)との面会を求めた。

するとみち子(本当は悪役)は下を向きブツブツ何か言いながら出てきたが、たかしは漫画に夢中だった。

 

「なあおい!何してんだ?今こんなことしている場合じゃないんだろ?早く出て来いよ!」たかしは読んでいる漫画のセリフを言葉に出しがちだった。

 

みち子(本当は悪役)が何か言っているのに気付いたたかしはポテンシャルがやばかった。だがみち子(本当は悪役)の声が小さくて聞こえない。

 

「え?なに?ちくわぶ?」たかしの声がこわばる。

 

「、、、、、、ぺん」みち子(本当は悪役)がボソッと言う。

 

「あ?」たかしは目を見開いてファンデーションを塗っていた。

 

「はんぺん!あれは間違いなくはんぺんだったわ!でもなんで、、、、?」みち子(本当は悪役)は魚を咥えて困惑していた。

 

「意味が分からないけどいいから早く出所してくれ、、、、、、、。そうだ俺にはやらないといけないことがあるんだ。『リミッター解除』。さっき夢の中で出来たこともやってみたいし。早く君に見せたいんだ。」たかしは自信ありげにボーボーに伸びた髭を触りながら言葉巧みに話す。

 

たかしの言葉を聞いたみち子(本当は悪役)は我に返り刑事に言った。

「この事件には真犯人がいるわ。私はその犯人を見た。私が見つけ出すから、、、、、、、ここから出してください。」

 

刑事は、いや、あのおじいちゃんお前の悲鳴を聞いてびっくりして心臓発作起こして死んじゃったんやで、と思いつつ、しばらくみち子(本当は悪役)を泳がせてみることにした。

 

「いや、殺人未遂犯を軽々しく出所させんなよ。どうなってんだこの村の警察は。」たかしは刑事に厳しく言った。

 

 

▼▼▼

晴れて出所したみち子(本当は悪役)は手始めにSNSで出所したことを報告した。

「ところでさっき話していた試してみたいことって?」みち子(本当は悪役)はイカ刺しを食べながら反応薄めに聞く。

 

「ああ。俺も君に聞きたいことがあるんだが(はんぺんとか、、、)まあまずは俺から話そうか、、、、、、髪の毛をくれ。」たかしは息遣い荒く問う。

 

注:たかしは御年39歳。みち子(本当は悪役)は御年24歳である。

端から見たらこれはたかしの変態プレイである。

 

「え、なに、、、、、、、、普通に嫌なんだけど。気持ち悪い。あんた今まで私が捕まってたの忘れたの?あんたも捕まるよ。」みち子(本当は悪役)は早口言葉のように言い放った。

 

「ん、まあそう来るだろうとは思っていたよ。だから安心してくれ。さっき山本のじいさん(御年98歳)から頂いておいたから。」たかしは山本さん(御年98歳)の髪の毛を握りしめながら偉そうに言っていた。

 

「ただでさえ禿げてて髪無いのに、山本さんの大切なものを奪うなんてサイテーね。それで何をしようっていうの?」みち子(本当は悪役)はハゲ愛好会会長の山本園太郎(98)と仲が良かったこともあり、たかしに再三幻滅した。

 

 

 

「これでだんごを作る!」たかしは元気にそう言った。

 

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第4話 銭湯で体洗わないで浴槽入るやつなんなん?~

「いてててて」

トイレにこもっているたかしは今後、リミッターを外す為にどうすればいいか考えていた。

「いったいどうすれば、リミットを外すことが出来るんだろうか。てかヒントも何もなしに分かるわけねえからな…

よし、とりあえず周りの人に聞いてみるか!」

たかしはおしりを拭かずに立ち上がり、ズボンも履かずに、トイレを出た。

 

「なあなあ、ばばあ」

「やめなさい、そのばばあっていうの」

「リミッター解除って知ってる?」

「!!」

突然の息子の発言に、よし子は驚きの顔を隠せずにいた。

「あ、あんた、それどこで…!?」

「なんかしんねーやつが教えてくれたよ。てか母ちゃんなんか知ってるみたいだな。なんでもいいから教えてくれよ。」

よし子は苦い表情を浮かべながら、シカトすることにした。

「おい、なんでシカトすんだよ、教えてくればばあ」

「あ、あんたは知らなくていいことなのよ」

よし子は、小さな声でつぶやくと、たかしの頭に手を当てた。

 

「あ?なにすんだばばあ、ゆるさ、、ね、、」

たかしの意識はだんだんと遠くなっていった。

よし子のおならには人を眠らせる催眠作用があった。

にぎりっぺと同じ要領で人に自らの屁の匂いを嗅がせると、その人を眠らせることができた。

むろん、自分も対象であるが、、。

よし子もその場で意識が遠くなっていった。

 

▼▼▼

みち子(本当は悪役)はとても焦っていた。

もうみち子(本当は悪役)に残された時間はわずかしかなかった。

 

みち子(本当は悪役)も本当にリミッターの解除の仕方がわからず、掛け算九九の仕組みも分からなかった。

とにかく、情報を集めるしかない、みち子(本当は悪役)は自分の村の役所へ向かった。

 

役所がある道の途中で、はんべそのよしきが話しかけてきた。

「よう、みち子ちゃん。どこいくの?」

みち子(本当は悪役)は考え事をしていたので、よしきの問いかけには全く触れずにいた。

よしきは、そのショックで歯が全部抜け落ちた。

そう。よしきはみち子(本当は悪役)のことが好きだったのである。

よしきがみち子(本当は悪役)のことを好きになったのは、あの日のあの出来事からであった。

 

おっと脱線してしまったな。

 

シカトされたよしきはみち子(本当は悪役)に強い敵意を抱いた。

そう。好意と敵意は表裏一体なのである。

よしきがみち子(本当は悪役)に対して、魔法を使ったのは、また後のお話。

 

役所についたみち子(本当は悪役)は手続きを済ませ、藁をもすがる気持ちで「初心者必見!魔法のすべて」という幼児向けの本を借りた。

 

ふ、こんなの借りるなんて私らしくないわね。

1人で爆笑しながら、ページをめくっていたら、「もし零技芽になってしまったら」という項目があった。

思わぬ文字におどろいたみち子(本当は悪役)は大きな声を上げてしまった。

「うわあああああああああああああああああ」

その声に驚いた、隣のおじいちゃんの心臓がとまってしまい、殺人犯としてみち子(本当は悪人)は逮捕されてしまった。

みち子(本当は悪人)が読んでいた本は、無造作に地面に落ちたが、黒いフードを被った謎の男(わたる)が本を拾い上げ、役所を出ていった。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第3話 野菜ジュースって日が経つとざらざらする~

 

 

みち子(本当は悪役)は仲間を探していた。

 

みち子(本当は悪役)には時間がなかった。

 

みち子(本当は悪役)には先見の明があった。

 

 

みち子(本当は悪役)は力のない者は嫌いだが、力にものを言わせて弱い者いじめをする者はもっと嫌いだった。

 

 

「大丈夫か?」みち子(本当は悪役)はチンピラたちを追い払い、たかしに声を掛ける。

 

 

「なに、大したことはない。相手は子供だったからな。君が来るのがもう少し遅ければ奴らの息の根を止めていたさ。」たかしは目の前にいきなり現れた自分よりはるかに年下の品のある女に驚き、おしっこを漏らしていた。

 

 

「そうか。なら私はこれで失礼する。」みち子(本当は悪役)がシャトルバスに乗ろうとすると。

 

 

「なあ。あんたさっきのは一体どうやったんだ?俺の前にいきなり現れたやつ。俺にも出来るかなぁ?なぁ?教えてくれよ。」たかしは去ろうとしたみち子(本当は悪役)を呼び止め執拗に問い詰める。

 

 

「これは私の力の一端だ。教えたところでお前に出来るわけでもない。」みち子(本当は悪役)は言い放つ。

 

 

「なんだい。こんな少女でも立派な魔法を持っているのかい。まあいい、せめてお礼くらいさせてくれ。あと名前も教えてくれよ。」たかしは自分の欠陥品の魔法を使い自分の毛から“だんご”を作り、渡した。

 

 

みち子(本当は悪役)は毛が“だんご”になったことにかなり抵抗があったが、世間体を気にして一応貰っておいた。そして名前を告げる。

 

 

「俺はたかしってんだ。あんたみたいな魔法があればと、子供のころ何度思ったことか。

村の儀式が楽しみでなあ。ふたを開けてみたらこれだよ。」

 

みち子(本当は悪役)は聞きたくもないたかしの過去を半ば強制的に聞かされていた。

 

 

「そんなことがあるのか。これがお前の魔法、、、、、、、、、」

みち子(本当は悪役)はそんなたかしを不憫に思いあることを提案する。

 

 

「話を聞いたところ、お前は俗にいう【痛心誓言(つうしんせいげん)】を掛けられた者か。」

 

痛心誓言とは、危険思想を持つものだけに与える特別措置の名称である。掛かられた者はとんでもなくどうしようもない魔法しか使えなくなってしまう。ちなみに痛心誓言を掛けられた者たちを“零技芽(ぜろぎが)”と呼ぶ。

 

 

「私の村ではこんな言い伝えがある。

『“零技芽”にはリミッターを外すことで通常以上の強大な魔法を手にする者が極稀に存在する』と。

ふん、これも何かの縁なのかもな。私もある目的で“零技芽”を探していたところなんだ。どうだ、自分のリミッターを外してみないか?」みち子(本当は悪役)は手を差し伸べる。

 

 

「その話乗った。それはそうと俺がリミッターを外すにはどうすればいいんだ?」たかしはお礼にもう一個“だんご”を作る。

 

 

「悪いがその相談には乗れない。というより私にも分からないんだ。自分で見つけてくれ。リミッターを外した後の話を今ここでしても仕方があるまい。お前が無事それを終えてからその後の事を話そうか。」

 

 

「ふ、ついに俺も魔法が使えるようになるのか。」提案したくせに何も教えてくれないみち子(本当は悪役)にたかしはキレそうになったが、ギリギリでキレた。

 

 

「すまないが、期限を決めさせてもらう。おそらく今から5年後にあることが起こる。これは私の村の預言者の預言でしかないが、、、、、、、、、、。

だからそれまでにはリミッターを外しといてくれ。頼んだ。」みち子(本当は悪役)はたかしから貰った“だんご”をその辺に散歩していた、いかにも『ボールは友達』と言いそうな婦人に一つ残らず渡し、そのまま去って行った。

 

 

 

▼▼▼

 

 

家に着いたたかしは余った“究極においしいだんご”を見つめる。

 

「みち子が言っていた期限まであと1年くらいか。

俺はみち子と出会ったあの日から何度も挑戦し続けてきた。一体どうしたらリミッターを外すことが出来るんだ。

俺にはこの“究極においしいだんご”を作ること、そしてそれを完成させることがリミッターを外すことだと思っていたが、、、、、。

みち子のやろう、初めの頃は興味津々だったのに、今では見てくれもしなくなった。たまに店で売ってるだんごを出してるのがバレたか?」

 

 

たかしはテーブルに置いてあった村で一番人気のある“だんご”を食べる。

 

 

「このだんごなんかより俺の作ったやつの方が数段うまい。

はっ!まてよ!俺が作っただんごを売れば、、、、、、、」

 

 

ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるっ

 

 

 

たかしはこの日あることを閃いたが、おなかを下して数日生死をさまよった。

 

 

原因はたかしが自分で作った“だんご”による食あたりであることは言うまでもない。

 

 

つづく