とよさとっこのこうかんにっき

我々が統治する豊里において、誰であろうとこの領域には踏み込むことは許さぬ。ウホウウホウホウホ

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第16話 男子、全校集会の時テロリストが入ってきたら、どのように戦うか考えがち~

 

「私に“痛心誓言”が掛けられている?」みち子(本当は悪役)は頭にクエスチョンマークが2,3個出た。いや、本当は1個だけだったかもしれない。

 

 

 

「そうじゃ。そもそも“はんぺん”の村はおでん村の監視下に入っており、赤子が生まれたら遠隔魔法で“痛心誓言”を掛けるのじゃ。」と村長はハンカチで汗を拭きながらメロンソーダを飲んでいた。

 

 

 

「なぜそんなことを?」みち子(本当は悪役)はチェイサーでメロンクリームソーダを差し出す。

 

 

 

「“はんぺん”が怖いからじゃろうのう。」村長はクリームを そっと どけてメロンソーダにして飲んだ。

 

 

 

「こわい?」たかしは床に落ちたクリームを何とかして食べたいと思っていた。

 

 

 

「この世で唯一おでん村の“ちくわぶ”にまともに張り合えたのは“はんぺん”だけだからのう。

ちくわぶ”は“はんぺん”の力が目覚めることを恐れておる。」村長はたかしを憐れむ目で見ていた。

 

 

 

たかしとみち子(本当は悪役)は村長の話を聞きながら夜ご飯を食べることにした。

 

 

 

「これは赤ん坊だった頃のみち子ちゃんをたかしの父である たかみち がこの村に連れてきた時の話じゃ。

その時 たかみち は腕に抱えていた赤子に強力な“痛心誓言”が掛けられていることに気付いたんじゃ。それを解除する手段を知っていた たかみち は、何とはなしにみち子ちゃんに掛けられた“痛心誓言”を解除してしまったんじゃ。」村長は涙目で話す。

 

 

 

「“してしまった”って、どういうことですか?まるで“リミッター解除”してはいけないみたいな、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は村長の言い方に少し不満を覚えた。

 

 

 

「ふふふ、してはいけなかったかもしれないな。

“痛心誓言”を解除した途端じゃ。みち子ちゃんが大声でいきなり泣き喚くと、辺り一面大きな地割れが起き、川が氾濫し、山が崩れた。

たかみちは何が起きたのか分からなかったが、とにかく泣いているみち子ちゃんを落ち着かせようとした。

みち子ちゃんは次第に落ち着き、すると天変地異とも言えるその現象も治まった。

聡明なたかみちは、これは自分の腕の中に居る小さな赤子が起こしたものだと悟り、みち子ちゃんを起こさないように早く村に帰ることにした。

この村についた後は、この村近辺の村長たちも呼んで、先程のようなことが起きないようにみち子ちゃんに強力な“痛心誓言”を掛けるように言い、しばらく村で休んだ後たかみちは村を出て行ったんじゃ。」村長は着ていた服をおもむろに脱ぎだす。

 

 

 

「う、う、うああああああああ!」たかしは頭を抱えながら叫び、気を失いその場に倒れこんでしまった。

 

 

 

「どうしたたかし!!!!!」みち子(本当は悪役)は挑発気味に言った。

 

 

 

「ちょっと村長!たかしの前であの人の名前を呼ばないでって言ったでしょ!」よし子は村長の服を引き裂きながら村長をしつこく注意する。

 

 

 

「しまった!すまん!たかし大丈夫か!たかし!――」村長はたかしが思春期の頃を思い出していた。

 

 

――――――――――――――

 

「たかし、お前どうして父ちゃんの名前を聞きたがらないんだ?」村長はたかしに聞いた。

 

 

 

「ふん!俺と母ちゃんを置いてどっかに行っちまったろくでなしの“くそデブ野郎”と同じ文字が入ってるだけで気が狂いそうになる。俺の名前はな、あいつの名前から取ったんだよ!」たかしは優しい口調で言った。

 

 

 

「いいじゃないか。あいつはな、後にも先にもこの村一番の魔法使いだぞ?」村長はしがれた優しい声でたかしを諭した。

 

 

 

「はん!村一番ねぇ。ふん!じゃあ俺は世界で一番の魔法使いになってやる!だから村長!俺にかっこいい魔法をくれよな!」たかしは未だ見ぬ自分の魔法能力に期待しながら村長に言った。

 

 

 

「はっはっはっはっはっはっはっはっは。世界で一番か、大きく出たな。世界で一番の魔法使いになってどうするんじゃ?」村長は聞いてみた。

 

 

 

「世界征服さ!」たかしは思春期全開だった。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、何バカなことを言っておる。そんな考え、魔法が付与される二十歳までになんとかしておくんじゃよ」村長はバカだなこいつと思いながら話半分で聞いてあげた。

 

 

 

「バカにするな!俺の世界征服はなぁ、いずれこの世のすべての魔法を使いこなして世界を、、、、、、。」急にたかしに勢いがなくなる。

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、なぁ村長。」たかしは急にセンチメンタルになった。

 

 

 

「、、、、、、、、、なんじゃ。」村長はしがれていた。

 

 

 

「俺が世界征服して悪者になれば、親父は俺の事をやっつけに来てくれるかな?」たかしはこの頃からマゾヒズム思考があった。

 

 

 

「なんじゃたかし。父ちゃんに逢いたいのか?」村長はたかしを煽った。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?ちげーーーーし!別にそういうわけで言った訳じゃねぇし!親父になんか逢いたくねえし!もういいし!帰るし!」たかしは半べそをかいて顔を赤くしながら帰ろうとしたが、たかしの肩を村長は両手で思いっきりつかむ。

 

 

 

「たかし。お前の父ちゃんはな、今世界と戦っておる。そしていつの日か息子に言われたいはずじゃぞ。おかえり たか――」おっとあぶない、、、うっかりたかしの父の名前を言うところじゃった、と村長は可愛げに舌を出しながら言った。

 

そしてつづける。

 

「たかし、お前の名付け親は確かにお前の父ちゃんだ、間違いない。」村長はたかし肩に手をやり目を見て言う。

 

 

 

「なんだよ急に。そんなの当り前じゃないか。」たかしは村長の禿げた頭を見つめる。

 

 

 

「父ちゃんがどういう気持ちでお前に名前を付けたか、分かるか?お前の父ちゃんはお前に期待して自分と同じ文字を入れたんじゃ。もはやあやつの名前は奴らにとっては聞きたくないほど恐ろしい名前のはずじゃ。」村長は髪の毛を整える。

 

 

 

「期待?奴らって?」たかしは村長の頭に思いっきり息を吹きかける。

 

 

 

「いいかたかし!お前はやらなくちゃいけんのじゃ!奴らの陰謀を阻止するのは、 たかみち の名を継ぐお前達なんじゃ!」村長はたかしの肩をガシッとつかみうっかりとたかしの父の名を言ってしまったことに気付いた。

 

 

 

「うああああぁぁぁぁぁぁぁああぁああああああ!」たかしは叫び倒す。

 

 

 

「たかしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」村長はおちゃめだった。

 

―――――――――――――――

 

 

 

▼▼▼

 

―おでん村 青汁同好会 道場にて―

 

「はは、しかし総帥も今までなんでこのようなお力を我々に与えなかったのだろうか。」胸に 『かまぼこ』 のバッジを付けた細身の男が口を開く。

 

 

 

「そんなことはどうだっていいさ。いつかはこうなると思っていた。だからこの組織に入ったと言っても過言ではねぇ。」胸に 『なると』 のバッジを付けた筋骨隆々の男が裁縫をしながら声を荒げる。

 

 

 

「そうだな。そう言えばあんたはずいぶん古株だって聞いたぞ。この中でも一番5G歴が長いだろ。入れ替わり競争が激しい5Gに入ってどのくらい経つんだ?」胸に 『ちくわ』 のバッジを付けた中肉中背の男が婚姻届けを書きながら聞く。

 

 

 

「もう20年以上、、、、、、、、か。」胸に 『いわしだんご』 のバッジを付けた巨漢の男が珍しく何も口にせず話す。

 

 

 

「20年!?あんたすげえな!総帥が世界征服だとかなんとか言ってて実のところ本当に出来るのか不安だったけど、あんたがいれば何とかなりそうだな!」中肉中背の男はペンを止め巨漢の男を見上げる。

 

 

 

「ふん。奴らは手ごわい、そう簡単にいくかな。まだ気は抜けないな。」巨漢の男は何か含み笑いをしさらに続ける。

 

「それに俺に頼らなくったって、ここには俺よりもすごい奴がいるだろう?」と扉から入ってきた白髪の病弱そうに見えるだけの元アナウンサーの方を見る。

 

 

 

「何を無駄話をしている。総帥がお呼びだ。早く来い。」胸に 『さつまあげ』 のバッジを付けた白髪の病弱そうに見えるだけの元アナウンサーが台本を見ながら皆に告げ、足早になるべく音を立てないように総帥の所へ向かって行った。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第15話 USB挿すとき大体上と下向き逆に挿す~

 

「“痛心誓言”を掛けられた最強の魔法使い?」たかしは興味が湧いた。

 

 

 

「それって、もしかしてリミッターを解除したってことですか?」みち子(本当は悪役)は期待に胸を膨らませて聞いた。

 

 

 

「そうよ。たかし、あなたのお父さんはね、いわゆる“技芽盛(ぎがもり)”とよばれる魔法使いだったのよ―――」

 

“痛心誓言”を掛けられ“零技芽(ぜろぎが)”になった者を解除する事をリミッター解除といい、リミッター解除をした者を“技芽盛”という。リミッターを解除すると、今まで使っていた本来の魔法が進化し、より強い魔法が使えるようになる。

 

「—――しかも、扱える魔法の数は10以上。魔法が複数使える人の事をなんていうか分かる?」よし子はたかしとみち子(本当は悪役)に聞く。

 

 

 

「俺だって10個以上使えるもんね!」たかしは鼻高々に言った。

 

 

 

「あんたは一回使ったらおなか壊すけどな!しかもそのあと何時間もトイレに引きこもり。って、お母さんの話聞きなさいよ!

それで、なんて言うんですか?」みち子(本当は悪役)はたかしがお尻からブツを漏らすところを幾度となく見てきた。

 

 

 

「“柄芸(ガラケー)”。こう呼ばれる者が何人かいるわ。村長もそう呼ばれる魔法使いの一人。―――」

 

“柄芸”とは、多種多様な複数の魔法を扱う者の事である。

 

 

 

「—――“柄芸”で“技芽盛”だなんて、今まで私が生きてきた中でもお父さんしか聞いたことが無いわ。」よし子は何故だか嬉しそうに話していた。

 

 

 

「なんだよ、俺の親父は正義のヒーローかなんかだったのか?世界が危機にさらされているかもって時にいったい何をしてんだよ。」たかしは熱がこもる。おしりに。

 

 

 

「たかし、あなたお父さんの事をどこまで覚えてる?」よし子はセンチメンタルに聞く。

 

 

 

「写真でしか見たことが無いって言ったろ。でもたしか、かなり太ってたよな。」たかしはお尻から異臭を放っていた。

 

 

 

「あなたのお父さんは、遠い昔この世界に魔法が作られた発祥の地である、おでん村からやってきた関取だったのよ。」よし子はシーザーサラダを作りながら話をつづけた。

 

 

 

「魔法が作られた?おでん村から?」みち子(本当は悪役)は血が騒ぐ。

 

 

 

「ええ、、、、、、。おでん村からやって来たというより“逃げてきた”っていう方が正しいかもね。」よし子はさらにバーニャカウダを作り始める。

 

 

 

「なんで?何から逃げて来たんだよ。ばばあ!」たかしはブツを漏らしたことを悟られないように強気で言葉を発した。お尻からの匂いも強烈だった。

 

 

 

「おそらくあなた達がこれから戦うことになるであろう、“青汁同好会”と呼ばれる組織よ。お父さんはね、青汁が大嫌いだったの。

おでん村では、“おでんのお供に青汁飲もう!”っていうスローガンがあるらしくて、お父さんは頑なに青汁を飲まなかったって、聞いたわ。

それに“青汁同好会”は世界征服を企む悪の組織だと言っていたわ、、、、、、、、。

そしてある日突然、お父さんは組織のリーダーに危険人物に認定され“痛心誓言”を掛けられ、私のいる村まで逃げてきたらしいわ。」よし子はコーヒーを淹れる。

 

 

 

「なんでわざわざ遠いこの村へ?」みち子(本当は悪役)は何となく聞いた。

 

 

 

「おでん村には昔からある言い伝えがあるらしくてね。」よし子は興味をそそる言い方をする。

 

 

 

「なんだよ言い伝えって!ばばあ!」たかしはまだ諦めていなかった。

 

 

 

「 『“我々二 対抗セシ ハンペン、数百年二 一度 我々ニ トッテ 絶望的ナ チカラデ コノ世ヲ 支配スル。

ハンペン ニハ ダンゴ作リノ 付キ人有リ。ソノ二人ガ マタ 手ヲ組ムノナラ 我々ハ 抗ウ術ハ ナイダロウ。』 」よし子はところどころ片言でいってリアリティを追求した。

 

 

 

「“はんぺん”と“団子作りの付き人”、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)はたかしの方を見る。

 

 

 

「過去何百年何度も、“はんぺん”は、おでん村のリーダーに戦いを挑んだみたいなんだけど、幾度となくおでん村のリーダー格の“ちくわぶ”筆頭に五人の部下により返り討ちにされたらしいわ。

“はんぺん”には時代によって様々な付き人がいたとも聞いたわ。

その中でも“ちくわぶ”から最も恐れられた付き人が“団子職人”の付き人、、、、、。」

よし子は買ってきたシーチキンサラダをテーブルに並べ始める。

 

 

 

「つまり親父は、“だんご屋の娘”である ばばあ に会うためにこの村まで来たってか?」たかしは半ば諦めていた。

 

 

 

「そうよ。それにお父さんはおでん村からいなくなった“はんぺん”の事が気になっていたの。

お父さんがこの村に来た時はすでに自身に掛けられた”痛心誓言”を解除して、様々な魔法を村の皆に見せて自慢していたわ。

あんなにすごい数の魔法を使うのに、『世界を救うのは自分じゃない』っていつも言っていたわ。」よし子はお父さんに出会いすぐに恋に落ち、たかしを身ごもったことを付け足した。

 

 

 

「すごい魔法使い様だったんだろ?それなら世界でもなんでも救えたんじゃねえの?」実は俺もお腹の中に身ごもっていて、、、、さっき、、、、、出した。と、たかし は付け加えた。

 

 

 

みち子(本当は悪役)とよし子は たかし を一回ずつバイオレンスした。

 

 

 

「『俺は”はんぺん”でも”だんご職人”でもない、選ばれし者じゃないんだ。世界を救うのは“はんぺん”と俺の子だ。』ってね。その時もうあんたはもう15歳だったわ。

そしてお父さんは“はんぺん”を探しに行く旅に出たの。」よし子はたかしの子育て奮闘記を書籍化しようとしたことを明かした。

 

 

 

「いや、俺の親父は15年も何してたんだよ。とっとと“はんぺん”探しに行けよ。」たかしのいう事は的を得ていた。

 

 

 

「それで、“はんぺん”は見つかったのですか?」みち子(本当は悪役)は手に汗握りながらよし子に聞く。

 

 

 

「ええ見つかったわ。でもそこで見たのは、かつて世界を陥れた悪の一族とは思えないくらいのやせ細った貧弱な村人たちしかいなかった。

その村は月に一度、おでん村からの使者が送られてきて、“良い青汁の元”を作らせるだけ作らせ奪い去っていたと聞くわ。」よし子は何やら悔しそうな顔をしていた。

 

 

 

「ひどい、、、、、、、、、」みち子(本当は悪役)も甘酸っぱい顔をしていた。

 

 

 

「こんな生活になったのはほんの百年ほど前らしいわ。

その前までは“はんぺん”は村全員が強い魔法を使い、おでん村に戦いを挑んだの。数百年に一度、この世をも破壊しうる魔法を持つ魔法使いが生まれる度に、あと一歩というところまでいったらしいわ。

あと一歩というところで、毎回その時の“はんぺん”の付き人がヘマを犯して負けたの。」よし子はポテトサラダを村長の部屋の冷蔵庫から出してきた。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)はなんだか急に不安になった。

 

 

 

「そしてそう、お父さんが“はんぺん”のいる村に行ったその時、ちょうど奴らがやって来たの。」よし子は手を震わせながら話す。

 

 

 

「“青汁同好会”、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は青汁が嫌いになりそうだった。

 

 

 

「お父さんは強い魔法使いよ。その時に来たおでん村の使者はそんなに強くなかった。

けど、百年前から“はんぺん”達にはこの世に生まれてすぐに“痛心誓言”という呪いが掛けられ、村人みんなしょぼい魔法しか使えなくなってしまったの。だからお父さんは一人で戦っていたの。

おでん村の使者はその時300人ほどいて、さすがにお父さん一人では“はんぺん”の村人全員を守りながら戦うことはできなかった。

それでもお父さんは敵の半分以上を倒した。そしてその時お父さんは何か異変に気が付いたみたいなの。」よし子はご近所さんから貰った温野菜サラダをテーブルの真ん中に置いた。

 

 

 

「異変?」みち子(本当は悪役)はサラダだらけのテーブルにこの中でいち早く異変を感じていた。

 

 

 

「わざわざこんな大人数で村に来た理由は何か?それに何かおでん村の奴らは戦いに来たという感じではなかった。何かを探しているような、そんな感じがしたって。

それで、助けた村人に聞いたみたいなんだけど、

 

『いままでこんな大人数でこの村に来たことなんかない。狙いはきっとあの子だ。早くあの子を助けてあげてくれ。』

 

その話を聞いた途端、何やらおでん村の使者たちが騒いでいることに気付いてそこに行ってみると、彼らはこう言ったみたいだわ。

 

『古より伝わる伝説の宝具 “図魔法(すまほ)”だ!ほんとにこの村にありやがった!さっさとこの赤ん坊ごと連れて総帥に渡すぞ!』

 

お父さんは必死になってその赤ん坊を助け、その子の親を探していたけど、すでに亡き者となっていたみたいでね、その後も“はんぺん”の村人たちを逃がそうとしたみたいなんだけど、村人たちは泣きながら、

 

『俺たちの事はいいから、その子を助けてあげてくれ。その子は俺たちの希望なんだ。いつかきっと、あいつらを、、、、、、、』

 

それを聞いたお父さんは“はんぺん”の村人たちを助けられないことを悔やみながら、その赤ん坊一人だけ助けて、私たちの村まで連れて帰ってきたの。」よし子は臨場感あふれるように一人ひとり役に入り込んで話を進めた。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)はよし子の話に聞き入っていた。

 

 

 

「それで、そのあと親父はどうしたんだよ?」たかしは父親のその後が気になった。

 

 

 

「そのあと、何やらお父さんは村長に耳打ちしてこの村を出て行ったわ。その赤ん坊の事もその時ちょうど来ていた隣の村の預言者兼ベビーシッターの 数子さん っていう人に託していたわ。

それと私には、

 

『おでん村にある物があって、それがきっとたかし達に必要になるものだから。』

 

って、、、、、、、、あとこれを渡してきたわ。」よし子はフェイントをかけて、それをたかしに渡す。

 

 

 

「なんだよこれ。」たかしは白くて柔らかい三角形のそれを受け取ると。

 

 

 

「それは、、、、、、、、、“はんぺん”?」みち子(本当は悪役)は、初めてそれを見たのにもかかわらず、それがはんぺんだと気づいてしまった。

 

 

 

「そうよ、これは“はんぺん”という物よ。私もその時初めて見たけど、なにか禍々しいものを感じて、、、、今までずっと冷蔵庫の奥の方にしまっておいたの。

 

そして今日みち子ちゃんとここに来たあなたに、お父さんの事を一緒に聞いてもらったうえで、これを渡そうと決めたの。みち子ちゃんもここまで大きくなったし、、、、、。

 

あ、もうここまで話したから感づいていると思っているけど、お父さんが助けた赤ん坊ってみち子ちゃんの事よ。」よし子は野菜ジュースを注ぐ。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は下を向く。

 

 

 

「んぐっ!ぶふぉぉぉぉぉ!ゲホッ!ゲホッッッ!」たかしは突然の母の発言に驚き、飲んでいた野菜ジュースを吐き出していた。

 

 

 

「私が“はんぺん”の村から連れて来られたことは、数子さんから聞いていました。

私が世界の救世主になることも、、、、でも私には力が無くて、、、、どうしたらいいのか分からなくて仲間を探していたんです。そしたらたかしさんと出会いました。

たかしさんは“痛心誓言”を掛けられているのにとてもすごい魔法を使うんですよ。」みち子(本当は悪役)は不本意にもたかしの事を褒めた。

 

 

 

「そういえば親父も“痛心誓言”掛けられてて、それを解除したんだよな?いったいどうやって?」たかしはあわよくば自分の“痛心誓言”も解除しようとしていた。

 

 

 

「それは私にも分からないわ。ただおでん村には“痛心誓言”を解除する、“リミッター解除”の方法が隠されていると思うの。

それをたまたまお父さんは知っていて解除が出来たんじゃないかしら。この村に来た時にはすでに“技芽盛”だったわ。」よし子が話し終わると後ろの扉が開く。

 

 

 

 

ガラガラガラガラ!ピシャッ!

 

 

 

 

「なんじゃい、まだいたんかい。」村長はツンデレだった。

 

 

 

「村長。」たかしはロリコンだった。

 

 

 

「お嬢ちゃん、世界を救うにはたかしの力が必要か?」村長はみち子(本当は悪役)の目をしかとみて言う。

 

 

 

「それはもちろん。たかしさんは“零技芽”なのにすごい魔法が使えますから。

“リミッター解除”したら、たかしさんこそ救世主になると信じてます。」みち子(本当は悪役)は嘘も方便という言葉を知っていた。

 

 

 

「あー、たかしはそのままでええじゃろ。“リミッター解除”なんかしたら何するかわかったもんじゃない。」村長は笑いながら言う。

 

 

 

「おい!村長!この話を聞いたらさすがの俺でも世界征服なんかしないよ!」たかしも笑いながら言ってみせた。

 

 

 

「みち子ちゃん、、、、。」村長は初めてみち子(本当は悪役)の事を名前で呼んだ。

 

 

 

「、、、、、、、、はい。」みち子(本当は悪役)は固唾をのむ。

 

 

 

「みち子ちゃんにもたかしと同じ様に“痛心誓言”が掛けられておる。

それを掛けたのは、、、、ワシなんじゃ。」

 

 

 

 

みち子(本当は悪役)は何言ってんだこいつと思わずにはいられなかった。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第14話 雨が降り出すときの匂い好きなんだよね~って言うやつは大体おばあちゃんっ子~

 

 

「おいおい村長、みち子が何か企んでるだって?冗談は顔だけにしてくれよ!

何を隠そう、俺とみち子は世界を救おうとしているんだぜ!」たかしは村長が聞きやすいように程よく低めだが甘さを効かせた声で言ってあげた。

 

 

 

「世界を救う、、、、、、?いったい何からじゃ?」村長は世界征服を企んでいた たかし の事が嫌いだった。

 

 

 

「おいたかし!あまり喋りすぎるな!」みち子(本当は悪役)は村長の耳に耳栓を付けようとしたその刹那。

 

 

 

「村長、、、、。今、村の若い子達には執拗なまでに“はんぺん”の歴史を教えまいとしているよな。

それは“はんぺん”がこれまでにしてきた残虐な蹂躙、圧倒的な力による征服、お相撲さん体系の人による制圧、はんぺんの思想に陶酔した者達の徹底的な駆逐、美白主義の潔癖症隊員による掃討、、、、、、、“はんぺん”による絶対王政を繰り返させない為、、、、。

“はんぺん”のその思想を今の若い子たちに植え付けないためだとしているけど、、、、、、。」たかしは似た意味の言葉を巧みに使い分け、村長に耳栓ではなく、少しお洒落なヘッドホンを付けてあげた。

 

 

 

が、村長は両手で丁寧に静かにヘッドホンを外し、みち子(本当は悪役)から貰った耳栓を付けた。

 

 

 

「あんたは“はんぺん”に怯えているだけなんじゃないのか?

“はんぺん”は遠い昔、当時その圧倒的な力で世界を侵略していたというが、それは本当なのか?」たかしは何かを思い出しながら聞く。

 

 

 

「何を言っている、、、、、?我々が“はんぺん”を、、、、、その娘を恐れているとでも言いたいのか?」村長は昔ハローワークで働いていた名残で、お昼ご飯のおかずにいつもひじきが入っていた。

 

 

 

「我々ってことは、、、、、やっぱり他の村の村長も、、、、か。」たかしは名探偵気分だった。

 

 

 

「たかし!どういうことだ?」みち子(本当は悪役)は話についていけてなかった。

 

 

 

「つまり、村長たちは“はんぺん”の本当の歴史について少なからず何か知っているってことだ。俺たちが聞いてきた歴史とは別の、、、、、、。」たかしはまだ名探偵気分だった。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」村長はしがれた雰囲気で黙る。

 

 

 

「おい!何か言ったらどうだ!本当の事を教えてくれ!」みち子(本当は悪役)は村長の耳栓を外し、耳元で大きな声で囁く。

 

 

 

すると村長の後ろにある扉が開く。

 

 

 

ガラガラガラガラガラッ!ピシャッ!

 

 

 

「!!!!、、、、、、、、、、、、、、なんだよばばあ、帰ってなかったのか。」たかしはいきなり現れたよし子に少なからず動揺した。

 

 

 

「なんだ?誰だ?」みち子(本当は悪役)はたかしの胸ぐらをつかみ聞く。

 

 

 

「お、俺の母ちゃんだよ。」たかしはみち子(本当は悪役)にビビりつつ答える。

 

 

 

「これは失礼、、、、、、。たかしさんのお母さんでしたか。私は隣の村に住む みち子 といいます。」みち子(本当は悪役)は咄嗟につばを吐いて、たかしの胸ぐらを離し何とかごまかした。

 

 

 

「ごめんねいきなり。後ろで話聞いてたわ。、、、、、、、たかし、あんた、、、、、。お父さんの事気にならないかい?」よし子は意を決した様子でたかしに聞いた。

 

 

 

「今更なんだよ。俺はその人の事をあまり覚えていないし、今は”はんぺん”の本当の歴史を聞いてんだ、邪魔するなよ。それに聞いたところで、、、、、、、。」たかしは急にトイレに行きたくなったので、本当は聞きたかったが、断った。

 

 

 

「おいたかし、何か大事な話かもしれないだろ!聞いとけよ!」みち子(本当は悪役)は小声でたかしに言う。

 

 

 

「いや、今お腹が痛くて、漏れそうなんだよ、、、、。」たかしは顔色がピンチだった。

 

 

 

「あんたのお父さんはねぇ――」するとよし子はたかしの返答を無視して続けた。

 

 

 

「おい、待て。まだワシはたかしとこの娘の事を信じちゃおらん。いくらあの“言い伝え”があろうと、この2人が何をするか分からん。、、、、、、、、、それにまだこの二人には早すぎる。」村長がよし子の話を遮る。

 

 

 

「いいえ、私は信じますよ。それに“強大すぎる力”もきっとこの2人なら世界を“破滅”ではなく、“平和”に導いてくれるはず。」よし子はせっかくなので村独特の訛りで喋ってみた。

 

 

 

「なぜ、そう言い切れる?」村長は言葉巧みに返す。

 

 

 よし子は目を閉じて、、、

「たかしは ダメ で クズ で ニート で おっさん で ロリコン だけど―――」

 

 

 

みち子(本当は悪役)はよし子の言う言葉を頷きながら聞く。

 

 

 目を開き、、、、、

「―――みち子ちゃんに会ってから変わった気がするの。毎日が楽しそうで、何やら毎日魔法の練習していて、でもずっとトイレに籠っていたり、、、、、、。たかしはお父さんによく似ているわ、、、、、、、。」よし子は全く別の事を思い出しながら話していた。

 

 

 

「奴は最高の魔法使いじゃった。だが今はもう、、、、、。」村長はたかしをちらりと見て、たかしのお父さんとは似ても似つかないと思っていた。

 

 

 

「おいおいおいおいおい!昔話なんか良いから早く話を聞かせてくれよ。どうせろくに覚えていない人の事だ。

今は“はんぺん”の歴史と、その敵について。世界の救い方を教えてくれよ。」たかしは腹痛の波が治まったので強気だった。

 

 

 

よし子は村長の方を見る。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、好きにせい。」村長は奥の部屋に行く。

 

 

 

「これはきっとみち子ちゃんにとっても大事な話よ。たかし、あなたのお父さんはね“痛心誓言”を掛けられた最強の魔法使いだったのよ。」

 

 

たかしはこの時、”痛心誓言”を掛けられた父を不憫に思ったという。

 

 

つづく

 

 

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第13話 絵を描いてて「”赤”取って」や、「”青”取って」は”色”付けなくても伝わるけど「”黄”取って」は”色”抜きでは伝わりにくい~

 

今から5時間前、よしきとの戦いが終わり、たかしの村に帰ろうとしていた時―――――

 

▼▼▼

「くそ!何でだ!」みち子(本当は悪役)は手に汗を握りながら、目を血走らせかなり焦っていた。

 

 

 

「なんだよ、、、どうしたっていうんだ?」たかしは腹痛で弱弱しくみち子(本当は悪役)に質問する。

 

 

 

「こいつに魔法を掛けられたからなのか知らないが、私の魔法が発動しないんだ。」みち子(本当は悪役)はたかしのブツまみれになって横に倒れているよしきを指さす。

 

 

 

「なんだよ、、、ここから俺の村まで歩いて何時間掛かると思っているんだ。シャトルバスは一日一本しか出ていないし。」今いるみち子(本当は悪役)の村とたかしの住む村の近辺は田舎だったため交通手段があまりなかった。

 

 

 

「そういえばあの時お前どうやって私のところまで来たんだ?」みち子(本当は悪役)は警察に捕らえられ、たかしが迎えに来てくれた時の事を思い出していた。

 

 

 

「ああ、あれか?なに、難しい事じゃないさ。迷子になったふりをしておまわりさんにお前の村まで送って行ってもらっただけさ。」たかしは何故かしゃんと胸を張り、誇らしく雄々しく、時には女々しく言ってみせた。

 

 

 

「そうか、それならさすがにもう警察のお世話になるわけにはいかないからな。早くお前の村に戻ってこいつに聞きたいことがあるんだが、、、、」みち子(本当は悪役)はよしきを汚らしいものを見るような目で見る。

 

 

 

「普通に歩いて行っても5時間近く掛かるぞ、、、、、、、、。そこで俺から提案があるんだが。」たかしはお腹を押さえながら俄然興奮気味でみち子(本当は悪役)に話しかける。

 

 

 

「な、なんだ?」みち子(本当は悪役)は気味悪そうにたかしを見る。

 

 

 

「みち子、お前の髪を俺にくれ」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みち子(本当は悪役)は相当悩んだ。

 

これまでに何度も たかし からこの手の嫌がらせを受けてきたが、その度に何度も断ってきた。

 

だが今回は早くこの魔法を使えない状況を打破しなければいけない気がした。

 

そのためには一刻も早く、よしきの村、もといたかしの村に行き、よしきの親や村長によしきの魔法について聞く必要があると考えていた。

 

だが今、みち子(本当は悪役)は自分の村に居る。たかしの村に行くのに歩いて向かうにはかなり遠い。

 

何かいい方法はないか考えていたところ、たかしの口からまたあの言葉が出てくる。

 

「「お前の髪を俺にくれ」」

 

みち子(本当は悪役)は本当に悩んだ。この世に生れ落ちて一番悩んだ出来事に値する。

 

だがこんなことで悩んでいては世界は救えない。

 

 

いや、でも嫌だ。

 

 

なんであんな気持ち悪いおじさんに自分の髪の毛を渡さなければいけないのか。

 

その毛でだんごを作り、少なからず自分のDNAがたかしの体内に取り込まれる。と、考えただけで虫唾が走り抜けていった。

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と、こんな感じで約5時間悩んだ末にみち子(本当は悪役)は決心した。

 

 

 

「お前に私の魔法が扱えるかな?」みち子(本当は悪役)は無理やり笑顔を見せながらたかしに自分の髪の毛を渡した。

 

 

 

「う、うむ。まあ、今はこれしか方法は無いからな。」たかしはまさか交渉が成立するとは思っていなかった。興奮しているのがみち子(本当は悪役)にばれないように冷静を装って髪の毛を受け取る。

 

そして“だんご”を作る。

 

 

 

「たかし、お前には何度も私の魔法を見せてきたが、今一度私の魔法について説明する。」こう言いながら、みち子(本当は悪役)は手のひらほどの大きさの“ある物”を取り出す。

 

 

 

「おお!やっぱり何度見ても興奮するなぁ!図魔法(すまほ)!」たかしはさらに興奮した。

 

 

 

「私の魔法は、この“図魔法(すまほ)”を使い行きたいところへ、どこにでもすぐに行ける、という魔法だ。使い方は、、、、わかるな?」

 

 

 

「ああ、わかる。さて、じゃあ、いただきますか。」たかしはみち子(本当は悪役)の“毛”から作った“だんご”を食べる。

 

 

もぐもぐもぐ、、、、、ごくん!

 

 

 みち子(本当は悪役)は頭を抱えながらこう思った

(うわあぁぁぁぁぁぁぁ、私の“毛”食べられちゃったーーーーーーー!きもぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!)

みち子(本当は悪役)は心に深い傷を負った。

 

 

 

「っっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」たかしは“だんご”を食べた瞬間、内から強大な力が沸き上がるのが分かった。そして、、、、、、、、

 

 

 

「どうしたたかし?」みち子(本当は悪役)は早く村まで連れて行けと言わんばかりの口調でたかしに言う。

 

 

 

そしてたかしはみち子(本当は悪役)を見ながら驚き、言葉を失い呆然としていた。

 

こんな子にこれほどまでの力があるのか、とみち子(本当は悪役)の魔法の力に驚き一瞬体の動きと思考が止まった。

 

実はたかしにはみち子(本当は悪役)に隠していたことがあった、、、、、、、、、、

 

 

 

「おい!早く村に帰るぞ!」みち子(本当は悪役)は機嫌がかなり悪くなっていた。

 

 

 

「お、おう!そうだな!」たかしはみち子(本当は悪役)の“魔法”を使う。みち子(本当は悪役)の”使っていた魔法”をそのままに。

 

▼▼▼

 

といった感じでたかし達はたかしの村に来ていた。

 

先程みち子(本当は悪役)に言われた通り、たかしはみち子(本当は悪役)を村長の所に案内した。

 

 

 

「村長久しぶり!俺だよおれおれ!」たかしは村長にオレオレ詐欺まがいの事をしでかした。

 

 

 

「ああ、たかしか。さっきお前の母ちゃんが来てたところだ。」村長はしがれた声で返す。そしてたかしの後ろに居るみち子(本当は悪役)に気が付く。

 

 

 

「あの、はじめまして。私、隣の村の みち子 といいます。

いきなりの質問で恐縮ですが、この村出身のよしきさんという人の魔法について伺いたくて、、、、」みち子(本当は悪役)は村長に聞く。

 

 

 

「よしき、、、、ああ、あのよしきか。覚えとるよ。あやつに“愛付利(あぷり)”を掛けたのはワシじゃからな。」しがれた声で村長は言う。

 

“愛付利(あぷり)”とは、村長が扱える魔法の一つ。

たかしの村では、とういかこの世界では20歳を迎えると、“愛付利”を掛けられ個人個人が持つ遺伝や性格による潜在能力を引き出し、魔法が使えるようになる。

基本的にどの村の村長も”愛付利”は使える。

 

 

 

「あやつの魔法は確か、“手がアイロンになる”魔法じゃったかな。あやつは家がクリーニング屋さんでのぅ、、、、、、、、、」村長は懐かしみながら話していると。

 

 

 

「そんなはずがない!」みち子(本当は悪役)が大きな声をあげた。そして我に返る。

 

 

 

「すまない村長、今みち子は訳ありで魔法が使えなくなってしまったんだ。そのよしきに掛けられた魔法のせいで。俺の目から見ても、どうもアイロンでどうこうしてたようには見えないんだが、、、、、、」たかしはお腹をさすりながら言った。

 

 

 

「それは真か、、、、、、、、、、、。」村長はみち子(本当は悪役)を見つめ、しがれた声で静かに言う。

 

 

 

「本当です。私の村でも魔法が使えるようになるには20歳を迎えてからでした。

でも私は生まれた時から魔法が使えました。私にとっては魔法とは体の一部といっても過言はありません。それが使えないとなると不安で不安で、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は小さな声で言ってやった。

 

 

 

「そうか、、、、、、、、、、。おぬしはんぺん屋の者か。」村長はここにきて一番のしがれた声を出した。

 

 

 

  「、、、、、、、、、、、!」みち子(本当は悪役)は何故バレたか分からなかった。

 

 

 

「そ、それはちがうぞ村長!みち子はだなぁ、、、、、」たかしがみち子(本当は悪役)の素性を隠そうとすると。

 

 

 

「隠さなくてもええ。生まれながら魔法を扱えるのは、神に呪われた悪魔の一族であるはんぺん一族しかおらん。」村長はたかしに何となく怒鳴った。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、」みち子(本当は悪役)は下を向き黙っていた。

 

 

 

「みち子さんや、、、、、、、、おぬしはいったい何を企んどる、、、、、、、、、、?」村長はみち子(本当は悪役)の事をなにか怖いものを見るような目で見ていた。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第12話 正義の味方は遅れてくるって、結構な罪~

 

 

よしきは奇声をあげながら剣を振りかざし、みち子(本当は悪役)に襲い掛かろうとする。

 

 

 

ガキィィィィィン!

 

 

 

わたるが自分の『手剣』でよしきの攻撃を防ぐ。

 

 

ガキィン!ガッ!ガッ!ガキィィィィン!

 

 

激しい攻防が繰り広げられる。

 

 

 

「っく!」わたるはめちゃくちゃ苦戦していた。

 

 

 

「わははははははははは、、、ごほっ!ごふっ!わはははははははははははははは!」よしきは途中咳をしながらも余裕そうだった。

 

 

 

そんな中、たかしとみち子(本当は悪役)は探していた。よしきに勝てそうな『毛』を。

 

 

 

「うーーーん、どれがいいかしら。」みち子(本当は悪役)はわたるが苦戦している横でゆっくりと探していた。

 

 

 

「これなんかどうだ?」たかしは口の周りにポテチの食べかすを付け、横になりながらみち子(本当は悪役)に言う。

 

 

 

「ちょっと、まじめにやってよ。」みち子(本当は悪役)は楽しそうに笑いながら言う。

 

 

 

「ははは、だよなごめんごめん。ちゃんとやるよ。」たかしはみち子(本当は悪役)と楽しそうに『毛』を探す。

 

 

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁ!助けてくれぇぇぇぇぇぇ!」わたるは一人で頑張っていたが全く歯が立たなかった。そして気を失う始末である。

 

 

 

よしきはわたるを倒し、みち子(本当は悪役)の方を向く。

 

 

 

「次はお前だぁ!みち子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」よしきはみち子(本当は悪役)に剣の先から魔法を放とうとする。

 

 

 

が、その隙によしきの後ろからたかしが『膝カックン』をくらわす。

 

 

 

するとよしきはみるみるうちに睡魔に襲われていく。

 

 

 

「な、、、、、、んだ、、、、これ、、、、、は。」よしきは地面にうつ伏せに倒れる。

 

 

 

「いやぁ、『膝カックンで人を眠らせる』魔法が戦いで役に立つとは思わなかったなぁ。ってかこの魔法本来どんな場面で使うんだ?」たかしは“アロマセラピスト”の家系の“てつろう”から借りた魔法でよしきをねじ伏せた。

 

 

 

「そんなこといちいち考えなくても良いの。戦いに使えるものはどんどん自分の物にしていくことよ。」みち子(本当は悪役)がよしきの『毛』を盗もうとしたその瞬間。

 

 

 

「がぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁああ!」よしきが覚醒し、みち子(本当は悪役)を目掛けて魔法を掛けまくった。

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」みち子(本当は悪役)はたかしがいきなりお尻からすごい量の 茶色いブツ を出したので驚いてしまった。

 

 

 

よしきは目の前が真っ白に、、、、、、、、、、ではなく、まっ茶色になり色々な屈辱感を感じながらそのまま気を失った。

 

 

 

「うぅぅぅぅ、お腹がぁぁ、、、、、、、、。」たかしは原因明確の腹痛に見舞われていた。

 

 

 

▼▼▼

 

 

「どうだお前たち。」総帥が5Gに青汁を差し入れながら問う。

 

 

 

「ええ、以前より増して魔力が上がっているような感じがします。」白髪の病弱そうに見えるだけの元アナウンサーが青汁を飲んで苦そうな表情で返す。

 

 

 

「これも古より伝わる“ちくわぶ”の契りのおかげなのでしょうか。」破れたカーテンを縫い直しながら筋骨隆々とした男が続く。

 

 

 

「その通り。これは君たちだからこそ出来ることだ。打倒“はんぺん”を誓った一族だからこそ、、、、、、ね。」総帥は皆を見つめる。

 

 

 

「お前たち、よくぞここまで育ってくれた。

お前たちはこれまでのどの時代の『かまぼこ』、『ちくわ』、『なると』、『いわしだんご』、『さつまあげ』よりも強い“具”になってくれた。これでこそ“5G”だ。」総帥は青汁を吐き気味で感極まっていた。

 

 

 

「私はもう年だ。長年おでん村の英雄と呼ばれてはいたが、、、、、、それはもう私ではない。

君たち“5G”だ。

長く我々に牙をむけ、世界を危機に招き入れようとした“はんぺん”一族が今、復活しようとしている。

どうか奴らを倒して、、、、、、、、、、、、

 

 

 

我々が真の恐怖で世界を支配しようではないか。」総帥は不敵な笑みを浮かべそうになりながら“5G”を奮い立たせた。

 

 

 

「「「「「はっ!!!!!」」」」」5Gは合唱練習をしていたので息ぴったりだった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

あれから5時間近くが経ち、みち子(本当は悪役)たちはたかしの村に居た。。

 

たかしはトイレに籠っており役立たず。

 

わたるは全身打撲でもはや役立たず。

 

役立たず×2に何も期待せず、みち子(本当は悪役)は一人でよしきを縛り上げ自白剤を飲ませようとした。

 

「さあ教えなさい!あなた達のボスの居所を!」みち子(本当は悪役)はイライラしながらよしきの髪の毛をバリカンで刈りながら、ながら運転はいけないとわかりながら問い詰める。

 

 

 

「誰が教えるかよ。お前は俺をシカトしたんだぞ。許さん。」よしきは頑なに言わなかった。

 

 

 

みち子(本当は悪役)は自白剤を飲ませる。

 

 

 

「おでん村だ。ボス達はおでん村に居る。」自白剤の効果は抜群だった。

 

 

 

「『おでん村』って、、、、、あの?

“達”ってことは仲間がいるのね?」みち子(本当は悪役)はさらに追加で自白剤を飲ませる。

 

 

 

「ボスには5人の屈強な部下がいる。あの方々は強い。何やら最近ボスがその5人の部下たちに力を与えたらしい。ただでさえ強いのに、もう誰もあの方々を止めることはできない。」よしきは流暢に話をする。

 

 

 

「ボスはどうやらお前を危険視していたが、俺が魔法を掛けたからな。何もできまい。そもそも貴様にはおでん村にたどり着くことも出来まいがな!」くくくくくく、とよしきは言いかけてそのまま気を失ってしまった。

 

 

 

「おい!私ではたどり着けないとはどういう事だ!おい!

しまった。自白剤を飲ませすぎて気を失ってしまったか。こやつに掛けられた魔法の解き方を先に聞いとくんだった。っくそ!」みち子(本当は悪役)はたかしをトイレから無理やり連れ出す。

 

 

 

「たかし。私をこの村の村長の所へ連れて行ってくれ。」みち子(本当は悪役)はたかしのお尻を見ないように、たかしの目を見て意思を伝える。

 

 

 

たかしはみち子(本当は悪役)の目を見ながら、自分のお尻を手で触り、ブツの感触を、そのぬくもりを、その手で欲しいままにしていた。

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第11話 新しくノートを買ったとき、最初の一ページ目だけ丁寧に書く~

 

 

総帥は5Gに力を分け与えると、暇そうにしている一人の青年に声を掛けた。

「君、名前は?」

 

 

 

「よしき。」彼はみち子(本当は悪役)にシカトされショックを受け、その影響で歯が抜けてしまった、元みち子(本当は悪役)のファンである。今はみち子(本当は悪役)に強い敵意を抱いている。

 

 

 

「今、私のかわいい5人の部下たちが眠りについてしまってね。代わりに君にこの子を探してきてほしいんだが、、、、、、、、、。」総帥はみち子(本当は悪役)の写真をよしきに見せる。

 

 

 

「、、、、、、、、、、、。報酬は?」よしきは名前を教えたにもかかわらず、名前を呼んでくれなかったことに強いファンタジアを感じた。

 

 

 

「君の願いをなんでもかなえてあげよう。」

 

 

 

よしきはお小遣いをもらった感覚でみち子(本当は悪役)を探しに行った。

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「おいおいおいおいおい、まてまてまてまてまて。、、、、、、、、、、、、、、、、、、それは本当かみち子。」たかしは驚きを隠せない様子でおしっこを3リットル程垂れ流していた。これはたかしの自己新記録である。自己記録更新の瞬間である。

 

 

 

「すまない。隠すつもりはなかったんだが。このことはあまり人に知られたくなくてな。」みち子(本当は悪役)はたかしに初めて謝った。

 

 

 

わたるはみち子(本当は悪役)が何を言っているのかちんぷんかんぷんでした。

 

 

 

「みち子が“あの”はんぺん一族かー。こりゃとんでもないことだ。」たかしはヒステリックに叫ぶ。

 

 

 

「おい!さっきからなんなんだ!“はんぺん”ってなんだ!その一族?は何かしたっていうのか!?」わたるは途中声が裏返って恥ずかしくなった。

 

 

 

みち子(本当は悪役)は答えづらそうに下を向き、そのまま寝ようとした。

 

 

 

「まあなんだ。みち子、とりあえずは安心しろ。今の若い子達には“はんぺん”については何も教えられていない。少なくとも俺たちの村ではな。」たかしは昔村長たちが話していた話を思い出す。

 

 

 

「じゃあ、わたるは何も知らないのか。」みち子(本当は悪役)は鳩が豆鉄砲を食ったような表情をして言った。

 

 

 

「なんだよ隠すのか!俺にも知る権利があるだろう!」わたるは自分の腕を剣に変え構えた。

 

 

 

「まあまあ待ちたまえわたる君。これはみち子にとっても言いにくい事だろうから、、、、。」たかしはみち子(本当は悪役)を気遣いわたるを御す。。

 

 

 

みち子(本当は悪役)はたかしの助言を無視し、わたるに話し始めた。

 

 

 

「私の一族は悪魔の一族って言われているの。

遠い昔にある人たちにとても悪いことをしたみたいでね―――――」

 

 

 

 

 

—――――――――――――――――

 

 

その昔おでん村という村がありました。

 

おでん村には、『はんぺん』、『かまぼこ』、『ちくわ』、『なると』、『いわしだんご』、『さつまあげ』、そして『ちくわぶ』という7つの一族が暮らしていました。

 

おでん村はとても平和で他の村からも、『おでん村はいつもみんなニコニコしていてきもち悪いな』と言わしめるほどでした。

 

なかでも村の内外から人気があったのが『はんぺん』一族である。『はんぺん』には力もあり村の皆も『はんぺん』の思想に染められていくのでした。

 

『はんぺん』一族はその人気を良い事に、村の皆にある大胆な提案をしました。

 

『『よし、ちくわぶを仲間はずれにしよう!』』

 

当時の『はんぺん』の頭首は、自分たちとは異形を成している『ちくわぶ』一族が気に入らなかったのです。

 

この言葉に強い共感を得た他の一族は『はんぺん』に協力し、『ちくわぶ』を仲間はずれにすることにしました。

 

そして『はんぺん』は気を良くし、まずは手始めにおでん村の協力してくれた仲間たちをもひれ伏させ、その強大な力で世界を征服しようと試みたのです。

 

 

 

しかしこのことを神様は黙っていませんでした。

 

 

 

神様は悪事を働いた『はんぺん』に天罰を与えるべく、『ちくわぶ』に世界を救うようにと、力を与えました。

 

そして見事に彼らは『はんぺん』による世界征服を止めることに成功し、世界から『おでん村の小麦屋』と呼ばれるようになりました。

 

その後『ちくわぶ』は、『かまぼこ』、『ちくわ』、『なると』、『いわしだんご』、『さつまあげ』の一族を持ち前の あざとさ でまとめあげ、6つの一族で平等で差別のない平和な村を築いていきました。

 

神から見離された悪魔の一族 『はんぺん』 は遠い小さな村で細々と暮らしていくのでした。

 

 

『おでんの具材は魚の練り物にかぎる』より一部抜粋

 

 

—――――――――――――――――

 

 

 

「なんだそのひどい話。お前そんな奴だったのか!」わたるは泣きながらみち子(本当は悪役)に剣を向ける。

 

 

 

「この話を聞いた時私は信じられなかった。私のご先祖様がこんなことをしていたなんて。だからまたこんなことが起きないようにするのが私の役目だと言われていた。

だから4年前数子さんに、この世に大変なある事が起きるって言われたとき、私が何とかしないとって、、、、、でも一人では何も出来ないから仲間を探していたの。」みち子(本当は悪役)は筋肉痛で動けなかった。

 

 

 

「それがこのおっさんかよ、、、、、、、、。」わたるは頼りないたかしを見て決心した。

 

 

 

「俺も仲間になってやる。一緒に世界征服を止めよう。」わたるのこの一言にたかしは、みち子(本当は悪役)を求め、たかしとわたるの恋の三角関係が始まることを覚悟した。

 

 

 

パリィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!

 

 

 

「「「!!!!!!!!!!!!」」」3人はめちゃくちゃ驚いたのである。

 

 

 

いきなりカフェの窓ガラスが割れて男が入って来るや否や、みち子(本当は悪役)のところにやってくる。

 

 

「おまえみち子だよな!探したぞぉぉぉぉぉぉ。」

 

 

 

たかしは早くも恋の四角関係が始まることを覚悟し始めていた。

 

 

 

つづく

はんぺんちくわぶ戦争紀 ~第10話 子供の頃、家に帰宅して誰も居ない時、怖いから「いるには分かっているぞ」って言いがち~

 

 

みち子(本当は悪役)は相当嫌がったが、たかしの提案でわたるを連れてカフェにいた。

 

「いやー、わたる君僕と同じ村なのかー。僕あまり外に出ないから近所さんとか分からなくてねー。」たかしは自分の脈拍を測りながら、肩でエイトビートを刻んで話しかける。

 

 

 

わたるはたかしの話を軽く無視して話す。

「さっき言っていた、、、、、、、、、世界征服を企んでるやつがいるってホントなのか?」

 

 

 

わたるはみち子(本当は悪役)に話しかけたが、みち子(本当は悪役)は青汁スムージーをストローで ちゅーっ と吸いながらわたるの問いかけを無視し、あんたが答えなさいよ、と言わんばかりの目でたかしを睨む。

 

 

 

「うん。実はね。今ね。僕たち情報を集めていてね。

というのも、僕たちには敵がいるんだけど。その敵っていうのがどうやら世界征服を企んでいるみたいなんだ。考えることが子供みたいだろ?」たかしは片目を瞑り、肘を曲げ両の手を肩の高さまで上げ、掌を上に、手首を外側に折り、肩を上下に動かして、バカバカしいと言わんばかりに、フンっと鼻で息を吐いた。

 

 

 

みち子(本当は悪役)は頭の血管がはち切れそうな表情でたかしを見ていた。なんならピキピキ音も鳴っていた。さらに言えばたかしの事がもうなんていうか嫌いだった。

 

 

 

「その敵っていうのはなんなんだ?てかそいつらからしたら、お前たちも敵ってことになるよな。何かあったのか?」わたるはみち子(本当は悪役)に聞く。

 

 

 

みち子(本当は悪役)はたかしに話させていると、飲んだ青汁スムージーがソリッド状に出てきそうなので、嫌々ながらも口を開くことにした。

「はっきり言ってその敵の正体は分からないわ。皆目見当もつかない。

村長に聞いても、ただそういう事を目論む組織がいるって事くらいしか教えてくれなかったわ。そしてその悪事を止めることが出来るのは、、、、、、、、、、私だって、、、、、、、、、、、、、、。」みち子(本当は悪役)は自信が無さそうに話した。

 

 

 

「組織、、、、、、ね。」わたるはこの瞬間、自分が財布を持ってきていないことが発覚し、お会計の時どうしようか考えており、みち子(本当は悪役)の話は上の空だった。

 

 

 

「てゆーか何よ。あんた何か知ってるの?そもそもなんで私たちの話に食いついたわけ?

もしかしてあなた、、、、、、、、組織の人ね!」みち子(本当は悪役)は見当違いもいいところだった。

 

 

 

「っふ、、、、、、、、、、俺が世界征服出来そうか?俺はつい先日、自分の力に自信を失ったところさ。」わたるはあの時の細身の男を思い出していた。すごく細かったなと。

 

 

 

「何かあったの?何かあったの?」みち子(本当は悪役)はわたるに2回聞いた。

 

 

 

わたるは静かに、お店の外の小鳥のさえずりさえ聞こえる位の声の大きさで話し始めた。

 

隣の村の役所で本を拾ったこと。

そこでみち子(本当は悪役)を見かけたこと。

その本には謎の言葉が書いてあったこと。

その本が奪われたこと。

黒いスーツを着てサングラスをかけた細身の男に戦いでコテンパンにやられたこと。

わたるは綿あめが好きだということ。

 

わたるは最後に「黒スーツの細身の男の胸に、ちくわぶのバッジが一つ付いてたな。」と付け加えた。

 

 

わたるはあった事を包み隠さず全て話した。

 

 

 

「その本は私が借りようとしていた本ね、、、、」みち子(本当は悪役)はあの時の失態を思い出して大爆笑をした。

 

 

「まさかあなたが拾っていたとは、、、、、ふふ、、、、、なんか不思議。」みち子(本当は悪役)はわたるの話を聞いて何か合点がいったみたいで、わたるに綿あめをご馳走してあげた。

 

 

 

「え?」わたるは綿あめは要らないからここは奢ってくれと心から願っていた。

 

 

 

「どうやらあなたの話を聞いて、私の敵がはっきりと分かったわ。いや、まだそう言うのは早いか。いや、でも大体分かったわ。って言っても半分くらいの確率だけどね。いや、そんなに無いか。」みち子(本当は悪役)は素因数分解の仕組みが分からなかった。

 

 

 

ごぼうの塩焼きおかわり!」たかしが馬鹿みたいに大きな声でメニューを追加注文する。

 

 

 

「今話した奴らがお前たちの敵なのか?

これは優しさで言うけど、、、、だとしたらやめておいた方がいい。細身の男、、、、、、あの男の魔法は洒落にならないくらいに強烈だった。君に勝てるとは思えない。

年も俺とそんなに変わらないだろ?ましてや女なんだから絶対に無理だろ。それに連れの人もそんなに強そうには、、、、、、、、、、、、、、、、。」わたるはごぼうの塩焼きをヨーグルトと一緒に美味しそうに頬張るたかしを、何か汚いものを見る様な目で見ながら言ってあげた。

 

 

 

「本に何が記してあったか分かる?」みち子(本当は悪役)は綿あめの炙りチーズグラタンをわたるにご馳走させた。

 

 

 

「いや、それがその本なんか変で、、、、、、、、、、、、、。聞いたことのない謎の言葉が書いてあった。」わたるは綿あめの炙りチーズグラタンは要らないからここは奢ってくれとご先祖様にお祈りしていた。

 

 

 

「なんて書いてあったの?」みち子(本当は悪役)は追加で綿あめのホワイトソース仕上げをわたるにご馳走させた。

 

 

 

「うーーーーーんと、、、、、たしか、、、、、、。“はん、、、、、、、、、ぺん”。うん、たしか“はんぺん”だったかな。」わたるはまさか今日一日でこんなに綿あめを食べるとは思わなかった。わたるはもはや綿あめが嫌いになりかけていた。

 

 

 

「やっぱりあの時私が見たのも、、、、、、、間違いじゃなかった。、、、、、、、、、、、、そうよ。“はんぺん”よ。、、、、、、、、、今はもうあまり語り継がれることのなくなった。」

みち子(本当は悪役)は何か意を決して次の言葉を発した。

 

 

 

「その本は、私の遠いご先祖様が書いた書物。わたしは、、、、、、、、、、、、、その“はんぺん”一族の末裔なの。」

 

 

 

みち子(本当は悪役)の言葉にたかしは、ごぼうのあく抜きの工程の如く、ただただ度肝を抜かれていた。

 

 

つづく